タイトル:ブルーフレンド
著者:えばんふみ(りぼんマスコットコミックス)
発行日:1巻:2010年9月15日、2巻:2011年2月15日
さて、「ブルーフレンド」の大きな特徴は、ろくな登場人物が登場しないことです。
そのような優しくない世界=私たちの現実世界によく似た悲しい世界が舞台となっております。
ヒロインの美鈴はそんなろくでもない登場人物たち(主に上記4名)の被害者とも言える存在であり、事件以降ずっと心を閉ざしていました。ですが、いつもまっすぐで裏表のない主人公・歩の登場をきっかけに心を開き始め、これまで抑えてきた他人への愛を全て歩に向けるようになります。
突然のキス。「歩だけでいい」「あんな奴に歩を取られたくない…!」「じゃあもう他の女の子と仲よくしないで!」…美鈴の独占欲はとどまることを知りません。そんな可愛い美鈴の歩への一途な想いは、「ブルーフレンド」の見所の一つです。同時期に連載していたなかよしの「野ばらの森の乙女たち」においても主人公に対して一途なヒロインが登場していましたが、やっぱり「偏愛」傾向を持つ女の子ってとっても素敵ですね!
母親は亡くなり、父親からは愛情を向けてもらえず、父親の代わりに親しくしてもらった男の人には裏切られ…そんな美鈴の心の闇に灯りをともしてくれる歩でしたが、歩はごくごくフツーの女子中学生です。やがて美鈴の愛の重さに耐えきれなくなり、突き放す一幕もありました。
それでもさすがは主人公、美鈴がピンチの時にはまるで王子様のように颯爽と駆けつけてくれます。
「…守らなきゃ どこにもすがる場所がない美鈴を あたしだけは守らなきゃ」
「―受け止めたい 傍にいてあげたい 美鈴の心の闇が溶けるまで ずっと」
歩に依存して独占しようとする美鈴と、そんな美鈴を闇から救ってくれる歩の二人の関係がとても魅力的でした。
「…あたしたち きっと繋がってるよね 別々の高校行っても」
予想を裏切られました。美鈴が成長したとはいえ、絶対に二人一緒の高校へ進学するものだと期待していましたので。ちょうど「けいおん!」において、四人が同じ大学に進学したように…。(あの展開に対して仲良しごっこなんていう批判もありますが、おそらくは大人の事情でしょう。四人揃っていないと、ストーリーを展開させづらいことこの上ないですし)
私は、「けいおん」は離別が描かれていないので、まやかしの友情、対して「ブルーフレンド」は真の友愛などと言いたいのではありません。
たしかに女の子って、どんなときでも一緒に行動をしようとしたり、口先だけで褒め合ったり…といった馴れ合い・仲良しごっこが多く、友情ももろくて壊れやすいなんて言われます。現に「ブルーフレンド」において井戸端会議をするモブキャラたちはそんな一面を見せていました。ですが「けいおん!」がそれに当てはまるというわけではありません。
『「愛の形」で百合カップリングを分類する』の記事で定義した愛の6分類で、二つの作品を振り分けますと、「ブルーフレンド」の歩と美鈴の関係は「友愛」に、「けいおん!」の唯たちの関係はどちらかといえば「情愛」になると考えます(友愛要素をもちろん含みますが)。歩と美鈴は互いを認め合い信頼しあう関係だからこそ、それぞれの進路に進み、唯たちの関係はどちらかと言えば「家族」のような一緒にいて安心する関係ですから、同じ進路に進むことを選択したのです。離別が成長に繋がるということは否定しませんが、どちらが青春ものとして優れているかという議論は不毛でしょう。
さて、高校に進学した美鈴は友人を作ることに成功したようです。大きな前進です。ですが歩から写メを受け取り、「―あたしのずっと大切な人」と口走るなど、かつて大好きなだった人のことを忘れられないでいるようです。高校在学中・卒業後、もしかしたら二人はまたどこかで会うのかもしれません…。そう期待せざるを得ません。
卒業後離ればなれになったり、学園祭で歩が王子様役をやらなかったり、美鈴が歩の将来の恋を応援したりと、人によっては百合と認められない場面も多数ありますが…。「友愛」成分の強い百合作品をお求めの方にオススメです。りぼんで連載していましたし、どちらかと言えば女性向けかもしれません。
なお、作中において割と重要な役割をこなしていた五月さんに最後まで触れなかったのはお察しくださいませ。また、主役交代した3巻のご紹介は別の機会に。
著者:えばんふみ(りぼんマスコットコミックス)
発行日:1巻:2010年9月15日、2巻:2011年2月15日
中学2年生の歩が出会ったのは、どこか影のある美少女、月島美鈴。正反対の性格の2人だったが、いつしか惹かれあうようになっていき…!? 恋と友情のはざ間で揺れ動く10代の危うい青春グラフティ、第1巻!!
男勝りのまっすぐな性格で女子に人気の少女、歩。男子に人気だが、どこか影を秘めた美少女、美鈴。突然のキス、嫉妬、誤解…。様々なことを乗り越えて互い に強く惹かれあっていく2人。だが、美鈴の過去を知る謎の少女、東の登場で事態は思いがけない方向へ動き出し…!? 最終回の後日談となる長編100Pも 収録された新世代ガールズラブストーリー、第2巻!!
- 愛を知らずに育ったヤンデレメンヘラ美少女とまっすぐな王子様
さて、「ブルーフレンド」の大きな特徴は、ろくな登場人物が登場しないことです。
・「俺に恥をかかせるな」が口癖の、血の繋がらない美鈴の父親
・男をとっかえひっかえしたあげく、最終的には美鈴を置いて亡くなった美鈴の母親
・小学生の美鈴に手を出そうとした病院の先生
・その先生の婚約者で、事件が原因で人生を狂わせられたと、美鈴を逆恨みし嫌がらせをしていた保健の先生
・至る所で井戸端会議という名の噂話・悪口をする女子生徒たち
・美鈴と付き合うために、友人の歩を利用しようとした男子生徒
・雨でずぶ濡れの美鈴をホテルに連れ込もうとするチャラ男たち
…などなど
そのような優しくない世界=私たちの現実世界によく似た悲しい世界が舞台となっております。
ヒロインの美鈴はそんなろくでもない登場人物たち(主に上記4名)の被害者とも言える存在であり、事件以降ずっと心を閉ざしていました。ですが、いつもまっすぐで裏表のない主人公・歩の登場をきっかけに心を開き始め、これまで抑えてきた他人への愛を全て歩に向けるようになります。
突然のキス。「歩だけでいい」「あんな奴に歩を取られたくない…!」「じゃあもう他の女の子と仲よくしないで!」…美鈴の独占欲はとどまることを知りません。そんな可愛い美鈴の歩への一途な想いは、「ブルーフレンド」の見所の一つです。同時期に連載していたなかよしの「野ばらの森の乙女たち」においても主人公に対して一途なヒロインが登場していましたが、やっぱり「偏愛」傾向を持つ女の子ってとっても素敵ですね!
母親は亡くなり、父親からは愛情を向けてもらえず、父親の代わりに親しくしてもらった男の人には裏切られ…そんな美鈴の心の闇に灯りをともしてくれる歩でしたが、歩はごくごくフツーの女子中学生です。やがて美鈴の愛の重さに耐えきれなくなり、突き放す一幕もありました。
それでもさすがは主人公、美鈴がピンチの時にはまるで王子様のように颯爽と駆けつけてくれます。
「…守らなきゃ どこにもすがる場所がない美鈴を あたしだけは守らなきゃ」
「―受け止めたい 傍にいてあげたい 美鈴の心の闇が溶けるまで ずっと」
歩に依存して独占しようとする美鈴と、そんな美鈴を闇から救ってくれる歩の二人の関係がとても魅力的でした。
- 「偏愛」から「友愛」へ―別々の道を歩むということ
「…あたしたち きっと繋がってるよね 別々の高校行っても」
予想を裏切られました。美鈴が成長したとはいえ、絶対に二人一緒の高校へ進学するものだと期待していましたので。ちょうど「けいおん!」において、四人が同じ大学に進学したように…。(あの展開に対して仲良しごっこなんていう批判もありますが、おそらくは大人の事情でしょう。四人揃っていないと、ストーリーを展開させづらいことこの上ないですし)
私は、「けいおん」は離別が描かれていないので、まやかしの友情、対して「ブルーフレンド」は真の友愛などと言いたいのではありません。
たしかに女の子って、どんなときでも一緒に行動をしようとしたり、口先だけで褒め合ったり…といった馴れ合い・仲良しごっこが多く、友情ももろくて壊れやすいなんて言われます。現に「ブルーフレンド」において井戸端会議をするモブキャラたちはそんな一面を見せていました。ですが「けいおん!」がそれに当てはまるというわけではありません。
『「愛の形」で百合カップリングを分類する』の記事で定義した愛の6分類で、二つの作品を振り分けますと、「ブルーフレンド」の歩と美鈴の関係は「友愛」に、「けいおん!」の唯たちの関係はどちらかといえば「情愛」になると考えます(友愛要素をもちろん含みますが)。歩と美鈴は互いを認め合い信頼しあう関係だからこそ、それぞれの進路に進み、唯たちの関係はどちらかと言えば「家族」のような一緒にいて安心する関係ですから、同じ進路に進むことを選択したのです。離別が成長に繋がるということは否定しませんが、どちらが青春ものとして優れているかという議論は不毛でしょう。
さて、高校に進学した美鈴は友人を作ることに成功したようです。大きな前進です。ですが歩から写メを受け取り、「―あたしのずっと大切な人」と口走るなど、かつて大好きなだった人のことを忘れられないでいるようです。高校在学中・卒業後、もしかしたら二人はまたどこかで会うのかもしれません…。そう期待せざるを得ません。
- 終わりに―誰か忘れてる?
卒業後離ればなれになったり、学園祭で歩が王子様役をやらなかったり、美鈴が歩の将来の恋を応援したりと、人によっては百合と認められない場面も多数ありますが…。「友愛」成分の強い百合作品をお求めの方にオススメです。りぼんで連載していましたし、どちらかと言えば女性向けかもしれません。
なお、作中において割と重要な役割をこなしていた五月さんに最後まで触れなかったのはお察しくださいませ。また、主役交代した3巻のご紹介は別の機会に。